2022年 船員の日メッセージ 日本カトリック難民移住移動者委員会 委員長 山野内 倫昭司教

カトリック中央協議会HP:https://www.cbcj.catholic.jp/2022/06/02/24701/ からの引用です。

教皇庁人間開発のための部署は、7月の第2日曜日を「船員の日」と定め、世界中の司牧者、信徒に船員たちのために祈るよう呼びかけています。日本カトリック難民移住移動者委員会も、船員たちとその家族のために祈るよう皆様に呼びかけます。

「私たちはみな同じ船に乗っている」1

船は歴史を旅する教会のシンボル

私は九州の大分県にある佐伯の港町で生まれ、8歳までそこで育てられました。佐伯港には造船所のドックがありました。しかし、港から3キロほど離れたところに住んでいたので、大きな船を見たことはありませんでした。1964年の4月末に、アルゼンチンに移住するために「ブラジル丸」に乗った時、初めて船を知ることができました。乗客が船に乗り込むと、別れのテープが投げられました。私は1時間くらい泣き続けました。船が岸壁を離れるにつれ、港と繋がっていたテープが水に落ちて見えなくなりました。数百人の見知らぬ人たちとの船上での生活が始まりました。船が沖に出た時、私は吐き気とめまいを感じましたが、まもなく慣れました。父は港に着いた時だけ船酔いから解放されました。ロサンゼルスを出た後、パナマ運河を通り、周囲のジャングルを通過して大西洋に入りました。そのとき、200メートル級の船が強い波にもまれて大きく揺れ始めたので、船で長年働いている船員が太平洋との違いについて話してくれました。自分にとっては海は同じように大きく波立っていただけで、違いはあまり感じられませんでした。船旅が続く中で、私は両親と兄弟たちと一緒でした。しかし、船員たちは、そうではありません。彼らの家族は遠い日本にいました。自分たちの子どもに会えるのはまだ数ヶ月も先のことだ、と話してくれました。その頃は、神戸港から出た船がブエノスアイレスの港に着くまで約70日かかりました。どれほどの人がその船で働いていたでしょう。数ヶ月間に及ぶ船上での労働です。その当時、インターネットや携帯電話はありませんでした。船で働いている人たちはよく手紙を書いて、港に着いた時に郵便で送っていました。多分、日本に残っている家族や両親のためでしょう。このように、船での仕事は大きな犠牲を伴うものでした。港に着くと、停泊しているさまざまな国の、たくさんの船を見たことが印象に残っています。その多くはとても大きな貨物船でした。

大西洋と太平洋、両方の大洋を通過しましたが、嵐には遭いませんでした。もちろん、雨の日はありましたが。しかし、ある船員が、海が荒れた日には外にある鉄のドアが強い風と波で壊れたことがあると話してくれました。「荒れている海では、どんなに大きな船でも、水の中にある胡桃のようだ」と言っていた、あの船員の表現が深く印象に残っています。

1970年、アルゼンチンでサレジオ会の小神学校に入った時に印象深かったのは、聖ヨハネ・ボスコのいくつかの夢の話です。特に、教会のシンボルである船の夢です。敵から攻撃を受けた船の船長は教皇です。敵がこの船長を殺しても、すぐに次の船長が選ばれ、船は海にそびえる二つの柱に縛られ安定します。ご聖体の柱と聖母マリアの柱です。横浜教区の浜松教会司牧センターにある、この夢の綺麗なステンドグラスのことを思い出します。司教叙階のカードにそのステンドグラスを載せました。

ステラマリス(海の司牧チーム)の今年のメッセージのテーマとして、わたしは「船」を選びました。海と港で働く人たち、船員の家族と司牧的コンタクトを取り、経験を分かち合うためにです。

フランシスコ教皇様は、新型コロナウイルスのパンデミックが始まった2020年3月27日の夕方、祈りの集いを一人で司式なさいました。広大なサンピエトロ広場には誰一人いませんでした。教皇様は「私たちはみな同じ船に乗っている」と呼びかけました。人の健康が見えない敵に攻撃され、それが世界の隅々にまで広がっている、と。この集いには、教皇儀典室儀典長であったモングイド・マリーニ司教様もおられました。この方は、2019年の教皇来日に同行していたので、教皇ミサの時にいつもお見かけしました。侍者をした神学生たちからとても慕われていました。マリーニ司教様はサンピエトロ広場でのあの夕方、4世紀の教父、聖ヨハネ・クリゾストモ司教教会博士のことばを引用しました。「手は歴史の舵に」。この表現を通して強調されたのは、「世界の命の本当のエンジンは祈る心」であるという点です。すなわち歴史の舵は、深い信仰を持ち、主に目を向ける大いなる謙遜を生きる人の手にあるということです。

この数ヶ月間、船で働く人たちは通常より厳しい状況に置かれています。船員たちは新型コロナウイルスのパンデミックによって家族に会うこともできません。また、日本のステラマリスのグループは、北海道から九州まで、自分たちが司牧活動を行っている港に入った船を訪問することを大きく制限されました。しかし、神様の導きによって船員との接触を継続し、その出会いから彼らの心からの声を集めています。その中で「船員のために祈りを捧げてほしい」との願いを特に預かっています。ステラマリス日本の集まりは、必ず海の星である聖母、ステラマリスへの祈りで始め、海で働く人々とその家族へのご保護を求めています。また、海の司牧の保護者である神の母聖マリアのご絵を飾るようにしています。

私たちの生活ではなかなか目にすることのない海上で、沢山の人の生活を支えるために命がけで働く船員や、その船員の帰りを家で待ち続ける家族たちのために、皆様もぜひ心をあわせて海の星である聖母に祈りを捧げてください。聖母マリアは必ず私たちの祈りに耳を傾けて取り次いでくださいます。

2022年7月10日

日本カトリック難民移住移動者委員会

委員長 山野内 倫昭

 

注 教皇フランシスコ 「なぜ怖がるのか 特別な祈りの式におけるウルビ・エト・オルビのメッセージ(2020年3月27日、サンピエトロ大聖堂前にて)」( 『パンデミック後の選択』(カトリック中央協議会事務局訳、2020年7月カトリック中央協議会発行 所収)

ヴァチカン、AOSの正式名称を「ステラ・マリス」に変更

カトリック教会の国際組織として世界各地の港湾などで船員を司牧する「船員司牧」(the Apostleship of the Sea :AOS)は、創立100周年にあたり、その正式名称を「ステラ・マリス」(Stella Maris:海の星、伝統的に聖母マリアを指す)に変更するとともに、新しいロゴマークを発表しました。

わたしたちAOS横浜も、正式名称をステラ・マリス横浜として、従来の活動をよりいっそう推進してまいります。

2020年(AOS100年)の船員の日にあたって

カトリック教会では、毎年、7月の第2日曜日(今年は7月12日)を「船員の日」と定めています。特に、今年はAOS100周年にあたり、日本カトリック難民移住移動者委員会から、メッセージが発表されました。

詳細は、下記をご参照ください。

2020船員の日 委員会メッセージ

また、同委員会のニュースレター「J-CaRM News」でも、AOSの活動が、新型コロナウイルスの影響とともに、特集されています。

https://www.jcarm.com/wordpress/wp-content/uploads/2020/06/J-CaRM-News-No.5.pdf